統計学が広げる地図作成技術

統計学が地図の作成にあたってデータ取得という場面で利用されることがよくあります。統計学上、調査対象全体を母集団と呼び、そのすべてに対してデータを取得する場合はともかく、簡便に母集団の傾向をとらえようとするときに使われるのが各種サンプリング手法です。それぞれの手法の特徴をよくわかったうえで使用しないと思わぬ判断ミスにつながる場合があり注意が必要です。

その中で代表的な「系統的サンプリング」についてご紹介したいと思います。先に地図作成に関わりの大きいデータの取り方についてご紹介しておきます。取り方には、点というスポットで収集するか、線というある一定方向への広がり(具体的には「傾き」という要素で置き換えています)でとるか、更に平面という2次元的な広がりの中でとっていくか、の三つが考えられます。各種サンプリング手法はこの3種類それぞれに適用されるものです。

また系統的サンプリングという手法にもそれぞれ「規則系統的サンプリング」と「不規則系統的サンプリング」の2種類が考えられています。名称の頭についている「規則・不規則」とは、最初にサンプリング数を決めてしまう「規則」とそうではない「不規則」の違いによります。そこで「不規則系統的サンプリング」というのは、母集団の分布が比較的均等となっている場合に有効とされています。

このサンプリング手法では、母集団を適当数分割したうえで、ある分割域での点の選び方として、乱数で得たa個の数値の一つに対しX-Y座標のX座標として、そのX座標値それぞれに、更に取得したb個の乱数の一つをY座標値としてサンプリング個所を特定し、同様の作業を各分割域ごとに行っていくものです。もう一つの「規則系統的サンプリング」はある一つの分割域でつかったX、Yの座標値を残りすべての分割域に同様に適用していくもので、いずれもサンプリング数としてはab個取得できますが乱数の使用が不規則系統的サンプリングではa+b個必要なのに対し、規則系統的サンプリングでは2個で済むという手軽さがありますが、逆に気を付けなければいけないこととして各分割域の対象に周期性があった場合、取得したデータが偏ったものになってしまう可能性を秘めていることで、使用に際しては注意が必要です。地図素材として取得したデータは上手に活用していきましょう。


地図と印刷技術

ヨーロッパに残っている地図の中には、羊皮紙に描かれたものがたくさんあります。12世紀に中国から製紙技術が伝わったのですが、それがすぐに地図の作成に生かされることはなく、ヨーロッパではそれ以後も、長い間羊皮紙を使い続けました。

印刷術がグーテンベルクによってもたらされてかも、地図がその技術によって作られることはしばらくなかったのです。

単なる文字であれば印刷するのは簡単です。しかし地図は複雑であるため、手書きするしか方法がなかったのです。その結果、地図は16世紀に入るまではずっと、高価なものと認識されていました。

印刷技術は年々進歩し、木版印刷、銅板印刷も見られるようになりましたが、彩色だけはそれらで対応できず、職人にお願いするのが常でした。大量生産など夢のまた夢でした。

地図が出版に適さなかった理由は、それだけではありません。

スペインとポルトガルがそうであったように、航海で世界の覇権を狙った国々にとって、地図は国家機密そのものでした。自分たちが死に物狂いで見つけた土地の詳細を、外国に簡単に知られることだけは、避けなければなりませんでした。流出を防ぐため、出版が許可されることはなかったのです。

ただ時代が進むと、地図は徐々に高級品ではなくなっていきました。大きなきっかけとなったのは、オランダの台頭です。オランダが海洋国家として勢力を増すと、メルカトルやオルテリウスといった職人が現れ、見た目に美しい地図がたくさん出版されるようになりました。

地図の実用性も大きく向上しました。世界地図は人気のある地図でしたが、地域図や都市図も合わせて求められるようになり、バラエティに富んだ地図が販売されるようになったのです。


科学技術の結集

最近の技術の進展には目覚ましいものがあり、可視光による撮影に加え、夜間でも撮影できる赤外線写真やレーダー写真も当たり前のように使われています。しかもこれらの機器の傍に撮影者がいる必要もありません。リモート・センシングによって離れたところで情報収集を行うことができるのです。宇宙の撮影はその典型例と言えるでしょう。但し実地の調査が全く必要なくなったわけでもありません。航空写真の技術がどれほど進歩しても、地形図を作成するための情報を完全に得ることができないからです。地形図は三角点の経緯度、標高の正確な測定値がなければ作ることができません。また写真に写ったものを判別するためにはどうしても実地調査が必要になるのです。それらの情報が全て集まってから、記号化し、製図します。

現代の地図作成におけるスピードアップとコストダウンは近代以前の原始的な測量法に鑑みれば奇跡的とも言えますが、距離計器の歴史を馬鹿にすることはできません。エラトステネスが計測した時代は、確かに歩測が主軸でした。しかしローマの時代には巻き尺や車輪で測ることができるようになり、近代に入ると経緯儀や光学的測定器が発明されたのです。この進歩のスピードは過去の偉人の努力の賜物であり、現代人の我々も色々学び取ることができます。中でも画期的な計測法として挙げられるのは、基線計測、光学計測、電子計測です。三角測量の時代、基線計測は国家の地形図を作るのに必須でした。その後精密光学機器が作られると単距離の測定は容易になりました。レンズやミラーを用いた角度計測によって距離をはじき出す仕組みです。長距離の測定は電子技術の時代を迎えて発達しました。